漢方内科について
ご希望の患者さまには、漢方薬を使った治療を行っております。
漢方はもともと中国で発達し、日本に渡って独自の発展をしてきた伝統医学です。漢方は、誰もがもともと兼ね備えている「自然治癒力」を高め、身体を本来あるべき状態に整えるような処方を行うことが基本です。
一人一人の自然治癒力を高めるためには病名で診断するだけではなく、証(漢方的な基準からみた患者さんの心身の状態)や病態に応じて最も適した薬を選び、使い分けることが必要になります。
同じ症状だからと言って同じ漢方薬を使用しても、人によって効いたり効かなかったりすることがあります。その患者さまに合った漢方薬を、合った飲み方で使用する必要があります。
漢方薬だけを数種類組み合わせる方法、西洋薬と併用する方法など、一つの症状でも患者さまお一人お一人それぞれ処方は異なってきますし、同じ患者さまでも体調が変化すれば処方も変わってきます。
漢方では、患者さまの体質と病態の双方を考慮に入れながら、そのときどきの処方をさせていただきます。
漢方は体調不良(不調)に対する治療も行っています
また、人の身体は健康と病気の二つの状態にはっきりと分かれるのではなく、体調がすっきりしないのに医療機関で検査しても「異常なし」と言われるような白でも黒でもない灰色の状態があります。これを漢方では「未病」と呼び、はっきりした病気ではないのですが、病態が本格化し、症状が顕在化する前の状態と考えて、放置すれば病気になる可能性があると考えられます。
体質を改善したり、身体の治癒力を高めたりして病気として現れる前に不調を治していく(未病を治す)ことを漢方では重視します。西洋医学では病気とはみなされないような不調も、漢方は得意とするところなのです。
こんな方に漢方はお勧めです
- 自覚症状はあるものの、検査をしても異常が見つからない方
- 西洋医学的な治療を受けても十分な効果が得られない方
- 西洋薬による副作用に悩んでいる方
- 西洋薬を長期にわたり用いることに抵抗のある方
- 夏バテ、身体がだるいなどの症状があり、西洋薬には治療薬がみあたらない方
- 冷えやのぼせ、肩こり、便秘、下痢などのちょっとした不調に悩んでいる方
- ストレスを溜め込みやすく、不安、イライラ、不眠などの症状に悩んでいる方
- 朝が弱い、立ちくらみ、めまいなど、低血圧による症状に悩んでいる方。
- 虚弱体質で疲れやすく、風邪をひきやすい方 など
冷え性(冷え症)と漢方
あなたの冷え性(症)度をチェックしましょう
冷え性チェックリスト
- 手足がすぐ冷たくなる
- 生理痛がひどい
- 手足がしびれることがある
- トイレが近い
- しもやけやあかぎれができやすい
- 風邪をひきやすい
- 肩が冷えやすく痛むことがある
冷え性で出やすい症状をあげてみました。3つ以上あてはまる方は要注意です。
冷え性(冷え症)とは?
皆が寒がらないのに自分だけ寒いと感ずることや、実際に気温の低下に対して体温調節ができず、体の表面の温度が低下してしまい、 日常生活に支障をきたし熟睡できなくなったりすることです。
主に手足の先や背中の辺りなど局所的に皮膚温が低下するものです。
原因としては、血管に作用する自律神経の機能が乱れ、血管が細くなり血流が低下してしまうことが考えられています。
冷え症(冷え性)は体質的な問題で、現代医学ではなかなか対処が難しい病態です。しかしながらエアコンやストレスなど環境からの影響、ダイエットや喫煙などの生活習慣も関連して、老若男女を問わずますます増えているようです。そして冷えばかりではなく、冷えとともに関連して生じる、頭痛・関節痛や神経の痛み、月経不順・月経困難症といった婦人病、肩こり、むくみ、便秘・下痢などの種々の症状も日常生活に影を落とし、しばしば重大な問題となります。
冷え性(冷え症)は、女性に多く、卵巣の働きが綿密に関係し、生理中や生理後の10日くらいの期間あるいは更年期に多くの症状がみられます。 時に甲状腺や副腎などのホルモン異常や動脈の閉塞などの病気が背景にあることもありますが、多くは女性ホルモンに対する自律神経の反応異常によります。
冷え性(冷え症)のタイプを以下のように分類して考えることができます
手<足の冷え症・冷え性(末梢循環不全症)
足(+手)の冷え症(冷え性)はよく経験されます。普通の冷え症(冷え性)は足元から上に向かって範囲が拡大します。つま先の冷え症(冷え性)が足首から下の冷え症(冷え性)になったら治療を開始しましょう。膝より下の冷え症(冷え性)になると治療してもなかなかよくなりません。
手指・つま先に冷え/のぼせ(冷え症・冷え性+のぼせ)
手<足の冷え症・冷え性(抹消循環不全症)とよく似ていますが、「のぼせ」があることが特徴です。「のぼせ・冷え」ともいわれます。更年期症状のひとつでもありますが、どの年齢でもみられます。この冷え症(冷え性)は自律神経系のアンバランスによって起こります。
腰から下の冷え症(冷え性)
手の冷えは無いことも多く、つま先の冷えよりは腰~大腿(ふともも)の冷えが気になります。下腹部の冷えを自覚することもあります。この冷え症(冷え性)は骨盤内のうっ血(血のもどりがよくない)によることが多く、漢方医学的にはお血病態と診断されます。
腹部の冷え症(冷え性)
腹部の冷え症(冷え性)は自覚する方が少ないのですが、漢方医学的には「裏寒」といって重要な病態です。消化機能低下に加えて婦人科疾患(月経不順・月経痛・不妊症)でもみられます。
女性に多い冷え性
女性に多い“冷え性(冷え症)”は漢方薬の服用で改善します。
原因は、自律神経のアンバランスによることが多いのですが、女性ホルモンが深く関係することは確かで、 それ以上の詳しいことはよくわかっていません。そのため病気の原因を直接・間接的に除去するという西洋医学的治療が難しい症状です。
冷えの他、よく伴う症状である、めまい、頭痛、肩こり、下痢などの症状があれば、それらを同時に改善させることもできることがあります。
個人の体質・症状に合わせてその人に合った漢方薬を選びますが、当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸、温経湯などの漢方薬が使われます。
冷え性の予防法
食事
冷たいアイスやジュース、生野菜、果物などの大量摂取は避け、体を温める食品(生姜、ねぎなど)をバランスよく摂りましょう。
入浴
寝る前に38-40℃くらいのお湯にゆっくりつかると、手足の血の巡りがよくなります。みぞおちまで浸かる半身浴、くるぶしまでをお湯につける足湯もおすすめです。
服装
靴下の重ね履きや、毛糸の下着などの工夫で、冷えから体を守りましょう。しめつけの強い下着は、血の巡りを悪くするので避けましょう。
運動
血行をよくするウォーキングやストレッチなどの適度な運動を心掛けましょう。
室温
過剰な冷暖房の元では、体温調節機能が狂いがちです。できるだけ室温と気温の差は5℃程度にしましょう。
更年期症状と漢方
更年期障害(更年期症状)とは?
日本人女性は平均して卵巣の機能が低下し50歳頃に閉経を迎えますが、その前後の10年間(45歳から55歳まで)を指して「更年期」と称します。このような、閉経前後における自律神経症状・精神症状を更年期症候群(更年期障害)と言います。
更年期は個人によって違いますが、この時期は女性ホルモンのバランスが乱れ、さまざまな身体的、精神的諸症状があらわれます。 とくに卵巣機能が衰えて、卵巣で作られる女性ホルモンのひとつのエストロゲンが消失することで、体と心にさまざまな影響を及ぼします。
症状の出方には個人差がありますが、のぼせ、発汗、冷え、イライラ、憂鬱、不安感、不眠、めまい、動悸、頭痛などの“不定愁訴”が現れます。
気力がなくなったり、物忘れがひどくなる人もいます。体の変調に加えて、家庭環境の変化(子供の巣立ち、親の介護など)や個人の性格といった背景も影響して、つらい症状を引き起こします。
また最近では、働き盛りの40から50代の男性にも女性と同様に、“疲れやすい・イライラする・集中力がない”など、いわゆる“更年期症状”が現れることがあることが知られるようになってきました。これを「男性更年期」と呼ぶことがあります。女性に比べて緩やかですが、男性ホルモンの減少が影響しています。これからの生活をより豊かにするためには、自分に合った方法で前向きに過ごすことが大切です。
更年期障害は簡略更年期指数(SMI)を用いることで症状の程度が評価できます。結果はいかがでしたか?
更年期障害(更年期症状)は漢方薬の使われる頻度が高い疾患のひとつといえます。
更年期に現れるさまざまな不定愁訴は、気・血・水のうちの、気や血の不調からきていると捉えられています。頭痛や肩こりは血の流れが滞る“於血”、めまい、気力や集中力の低下、睡眠障害、耳鳴りなどは血が不足する“血虚”、のぼせやほてり、頭痛、動悸などは気の流れに異常が生じる“気逆”と捉え、これらを改善する漢方薬が処方されるのです。
漢方薬のよいところは、複雑な症状に対して効果が現れることです。また、漢方薬はその人の体質や体格を考慮して処方されるので、その人とぴったり合えばよく効きますが、合わない場合はなかなか症状が改善されないということもあります。その場合は、他の漢方薬に切り替えるなどの対応が必要です。
よく用いられる漢方薬
- 加味逍遥散
- 温経湯
- 五積散
- 女神散
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
- 苓姜朮甘湯
- 八味地黄丸
- 桂枝茯苓丸
- 防風通聖散
- 温清飲
- 当帰芍薬散
など、多くの種類があります。
慢性疲労症候群と漢方
検査で異常がないのに、いつも疲れる、どうすれば良いか?
慢性疲労症候群という病気としての“疲労”は認められながらも、原因はまだ分かっていません。検査では異常が見つからず、 いつも疲れやすく、全身倦怠感、食欲不振、集中力の低下、めまい、手足の冷え、慢性的な下痢や便秘、朝に弱いなど・・・。
漢方医学では、これらの症状を消化機能の低下によるエネルギー不足と考え、漢方薬を用いての治療をしています。
何のつながりもないような症状も、脾胃の機能低下が原因であれば、衰えた脾胃の力を補って、全身に栄養物を巡らせるエネルギーを作り出すのが、“補中益気湯”の主な作用です。
補中益気湯は、脾胃の機能低下に着目し、回復させることで、目覚めや胃腸の回復、立ちくらみ、発汗、頻尿、下痢などに効果があります。
適応する病気には、 胃下垂症、慢性下痢、子宮脱、痔などの胃下垂、女性の月経過多、不正出血、帯下、老人性失禁などです。
便秘と漢方
便秘とは
便秘だと、お通じが1週間ない。おなかも気分も悪くて下剤をいくつも試し、かえって下痢や痔になってしまった、なんていう辛い経験はありませんか?
便秘のうち、特定の病気(大腸がんや手術後の癒着、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、甲状腺機能低下症など)や薬の副作用が原因で起こる便秘を除いた、 大腸や直腸の働きが異常となっている便秘を機能性便秘と言います。
機能性便秘が慢性になったものが、いわゆる常習性便秘で、便秘で最も多いタイプです。 生活習慣やストレス、加齢などの影響によって大腸や直腸、肛門の働きに異常を生じたと考えられています。
機能性便秘(常習性便秘)は3つに分類されます。
- ①弛緩性便秘…便意・排便回数が乏しい、硬い便が特徴です。高齢者・虚弱者や出産後などにみられ、腹筋・腸の蠕動が弱いため起こります。高齢者に多く、冷え性の人、運動不足などに多くみられます。
- ②けいれん性便秘…便意があっても出にくい、下痢になる、反対にウサギの糞のようにコロコロの便になることが特徴です。睡眠不足やストレスにより、腸の蠕動が不安定になっている(過敏性腸症候群)ため起こります。
- ③直腸性便秘…便意を感じない、浣腸に頼っている、便が大きくて硬いことが特徴です。排便を我慢することや下剤や浣腸の乱用により起こります。
便秘が続くと、排便しても便が硬いため、肛門を傷つけやすく“痔”になります。肛門の痛みや出血を恐れて便意を我慢していると、さらに便が硬くなって便秘を悪化させてしまいます。
漢方治療は、乱れた腸の働きを整え、正常な便通を取り戻すのに優れた効果があります。大黄甘草湯、調胃承気湯、防風通聖散、大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、 通導湯、三黄瀉心湯、潤腸湯、麻子仁丸など多くの漢方薬が体質・症状により使われます。
漢方薬も副作用があります
漢方薬は天然の植物や鉱物などの生薬から構成され、長い歴史の中で有効性が確認されてきた処方が現代まで継承されております。しかし、漢方薬でも予期せぬ副作用が生じることがあります。
もっともよくみられる副作用は、胃痛や吐き気・下痢などの胃腸障害です。その他、「甘草」という成分の過剰によるむくみや血圧上昇、「麻黄」という成分による動悸や不眠などもみられることがあります。
これらの症状は原因となった薬剤をやめることにより改善します。また、人によっては生薬に対するアレルギーにより発疹や肝機能障害、間質性肺炎や膀胱炎をおこすこともありますので、漢方服用開始後、何か気になる変化があったときは必ずご相談下さい。
冷え性度チェック
これから症状に関する質問をしていきますので「はい」の数をチェックしてみて下さいね。
冷え性は女性特有の症状と考える人が多くいますが、男性であっても冷え性、特に隠れ冷え性にかかる人は多くいます。
現代人は生活習慣が乱れがちなためか、冷えや寒さを感じる男性も増えているようです。
特に肥満気味の方は、隠れ冷え性になりやすいので注意しましょう。
肥満と汗かきが隠れ冷え性を起こしますし、隠れ冷え性がメタボリックシンドロームを引き起こす可能性も指摘されています。
自分が男性だからとタカをくくらずに、冷えや寒さを感じたら冷え性を疑いましょう。
隠れ冷え性チェックリスト(監修/全国冷え性研究所)
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